Turkish Pottery, 2016

Turkish Pottery, 2016

2010/10/19

A hidden artist

大島でこえびをしている日。
ある入所者のおじいさんが、やさしい美術プロジェクトの高橋先生に段ボール箱を託した。しかも5~6箱あって、かなりの荷物だ。
聞けば、今年の4月に亡くなった入所者の方が残したものだという。段ボール箱を預かっていたおじいさんは「やっと肩の荷が下りた」とほっとした顔。

箱を開けると、出てきたのは大量の写真とネガ。
溶けるような太陽(だるまと書いてあった)の写真や、定点観測した月の写真、雨だれが落ちる一瞬を捉えた写真、海に浮かぶ蜃気楼の写真など、素人目にも明らかに「すごい!」とわかるような写真がいっぱい出てきた。
とりあえず軽トラで別の部屋に段ボール箱を運び、みんなで写真を並べていく。












「これで企画展5回はできるね!ダルマ展、星展、浮き船展、雨だれ展、岩展・・・・」
勝手にキュレーションを始める私たち、こえび。とにかく、世に出さなきゃいけない写真であることは間違いない。
瀬戸内国際芸術祭には第一線で活躍するアーティストの作品も多く展示されているけれど、それらを見たときとは明らかに違う衝撃があった。写真というのは、その人の見たものがそのまま反映される。この段ボール箱に入っているのは、おじいさんの人生の記録なのだ。その人はほとんど旅行にも出かけない人だったから、おそらく写真のほとんどは大島で撮られたものだろう、とのこと。
おじいさんがもしまだ生きていたら、写真の撮り方を教えてもらえただろうか。
いや、生きていたらこの写真は見せてもらえなかったのだろうか。
閉ざされた島で生涯を終えたおじいさんが、ファインダー越しに見つめていたもの。
それは私が想像したよりも、ずっとずっと、ずっと大きな世界。
これぞまさに、瀬戸内のアート。
おじいさんが残した写真の一部は、大島のギャラリー15で展示されているそう。もし瀬戸内に行かれるのであれば、是非見に行ってみてください。