Turkish Pottery, 2016

Turkish Pottery, 2016

2016/09/21

くるり「NOW AND 弦」@Bunkamura オーチャードホール





















2016年9月20日(火)@Bunkamura オーチャードホール
くるり「NOW AND 弦」1日目


 2007年12月、のちにライヴアルバム『Philharmonic or Die』に収録されるくるりのコンサートがパシフィコ横浜で行われた。予定が合わなかったかチケットが取れなかったかで行くことができず、ずっと後悔していたのだが、9年間持ち越した無念は今夜「思い続けていて良かった!」という嬉しさに変わった。

 結成20周年を記念したアルバム再現ライヴ「NOW AND THEN」というシリーズ企画を遂行中のくるり。ついに、クラシック音楽に傾倒した『ワルツを踊れ』『Philharmonic or Die』の番が回ってきた。本作に参加したFlip Philipp氏とウィーン・アンバサーデ・オーケストラのメンバーが来日し、オケ編成のコンサートが9年ぶりに行われたのだ。

 入口では本日のプログラムが配られた。開演前からセットリストが明らかになっているのは、クラシックのマナーに則った演出のようだ。コンサートは、指揮者を入れて20人余りのオーケストラをフィーチャーした「Remember me」でスタート。ロックバンドのステージを見ているとは思えない優雅な始まり。サポートドラムのCliff Almondがスティックで合図をすると、2曲目は『Philharmonic or Die』にも収録されている「ジュビリー」が演奏され、「今」と「あの頃」がステージの上で緩やかにつながる。セットリストの中心に置かれていた曲は「ブレーメン」。ステージが黄金色の光に照らされ、ドラマチックな前奏が始まった。「NOW AND 弦」は単に再現ライヴということではなく、当時の曲も演奏しながら、ストリングスアレンジされた新旧の名曲を織り交ぜたセットリストになっている。ただ『ワルツを踊れ』収録曲は、もともと音作りの段階でオケを組み込んでいるためか、生演奏されると曲の美しさが際立つ。抑揚を効かせたクライマックスで締めくくると、これまでで一番大きな拍手と歓声が上がった。



 指揮者のFlipはタキシードで身を固め一団を率いている。ひとつ思ったのは、オーケストラの指揮者も、ロック音楽で指揮をすると、クラシックのときよりノリノリになるようだ。ときおり腰を揺らしながらタクトを振る後ろ姿がチャーミングで「chili pepper japones」のときなどは「Pepper, pepper, pepper〜」と全身でクレッシェンド。「琥珀色の街、上海蟹の朝」ではラップとストリングスが融合し、オーケストラのメンバーもリズムに合わせて肩を揺らす。ハンドマイクで歌う岸田氏は「路地裏のニャンコ」ポーズを決めている。もうこれは、音楽のジャンルも、真面目も不真面目も、すべての境界線を軽やかに超えた「くるり」という音楽である。岸田氏が現在12月の初演に向け交響曲を書いているのは『ワルツを踊れ』で出会ったFlipに影響されたからだそうだ。

 前日に行われた京都音博は、くるりの出番の直前に天候の悪化で中止。くるりの2人にとっても共演ミュージシャンやスタッフにとっても、ようやく幕が上がって、思いの込もったステージであったに違いない。今夜も台風の影響で、開演前の渋谷は土砂降りに近い雨が降っていたが「ここに皆さんと居合わせたことを嬉しく思います」と岸田氏。ラストソング「Remember me」を演奏したのち、スタンディング・オベーションに応えメンバーが再登場する。「練習した曲はもったいないので全部演奏しちゃったんですが」と断った上で、観客総立ちの中(9年前のパシフィコ横浜と同様に!)本日2度目の「ブレーメン」でコンサートは締めくくられた。
 
 9年越しの思いを果たせた嬉しさと、まだ大学生だった当時の記憶が同時に湧き上がり胸がいっぱい。くるりの音楽を好きでよかった。時の流れを愛おしく感じる夜だった。




2016/09/18

村田沙耶香『コンビニ人間』





















皆が不思議がる部分を自分の人生から消去していく。
それが治るということなのかもしれない。
村田沙耶香『コンビニ人間』文藝春秋

 第155回芥川賞受賞作、読みました。

 主人公は、コンビニ店員歴18年の36歳女性。独身。幼い頃から変わった子だった。世間とのズレを自覚してからは「問題を起こすまい」と粛々と生きてきた彼女だが、大学生の時にコンビニでアルバイトを始めたことにより人生が変わる。マニュアル通りのコンビニ店員を演じることで、初めて「世界の正常な部品」になれたという感覚を味わうのだった・・・

 自分自身ちょっと変わった人間だと自覚しているので、主人公が世間一般の「普通」と折り合いをつけようと奮闘する姿に、ヒリヒリするような気持ちになりました。「何か問題でも?」と跳ね返せるぐらいの度胸があればいいけれど、すべてはそう簡単にはいかないもの。私はというと、小学生の頃は「面倒なことにならないように優等生でいよう」と考える子どもでした。大人になってからは、好きな仕事をしていながら、会社勤めをしている友達とのギャップを感じるとモヤモヤします。個性が求められると同時に、一般的な感覚を持ち合わせていることを強く要求されるので、その狭間で混乱することもあります。超カリスマ的な存在でない限り、日本社会の中で「ありのまま」で生きていくなんて、ほぼほぼ不可能だろうと思っています。だからこそ主人公が自分の不和な部分を治そうとしている姿が痛々しく感じられました。ユニークな感覚をもった人たちを生かすことができない社会。「普通」でいるって、なんて難しいことなのだろう。
 
 ネガティヴな感情が渦巻きながらも感じた清々しさ。それは、主人公の見事な仕事ぶりです。

売り場のペットボトルが一つ売れ、代わりに奥にあるペットボトルがローラーで流れてくるカラカラ、という小さい音に顔をあげる。冷えた飲み物を最後にとってレジに向かうお客が多いため、その音に反応して身体が勝手に動くのだ。ミネラルウォーターを手に持った女性客がまだレジに行かずにデザートを物色しているのを確認すると、手元に視線を戻す。(pg3-4)

 没個性的な印象を持たれがちなコンビニ店員という仕事。しかし、それも極めればここまで繊細で無駄のない動作が出来るようになるのかと感嘆しました。マニュアル人間では成し得ないプロの接客。あれだけ多くの業務を滞りなく同時進行できる能力があって、かつ自分の仕事を愛している主人公をかっこいいと思いました。
 
 書評などで「笑った」というコメントをしばしば読むのですが、私は笑いポイントが最後まで分からず。これも世間一般とのズレなのか?とちょっと不安になっています。


2016/09/12

ロンドンのオーガニック事情

 この夏、学生の頃以来の長期旅行に出かけていた。南仏から徐々に北上してイギリスに渡り、アイルランドのダブリンをゴールとする旅。
 3週間の記録を思いつくままに書き綴ってみようと思う。
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1. オーガニックなパブ





















 初めてのロンドン。目的はいろいろあれど、まず向かったのはパブだった。地下鉄Angel駅から徒歩15分ちょっと。「Riverford at The Duke of Cambrige」というパブがある。駅から離れた落ち着いた住宅街の中にあって、日曜日の昼下がり「近所に住んでるのでフラッときました」風なお客さんで賑わっていた。























 この店の特徴は、ビールや料理の食材をオーガニックにこだわっているところ。自然派ワインも様々揃っている。センスのいい木製の家具がゆったりと並べてあって、テーブルに置かれたジャーには季節の花が生けてあり、アンティークらしきカトラリー。我が家のダイニングもこんな雰囲気だったらいいのにと思う。




















 
 自家農園の野菜を盛り付けた目にも鮮やかなVege Platter (£9) は、一つ一つの野菜がフレッシュで、しなやかな飲み口のオーガニック・ビールと相性が良い。通常のパブはぎゅうぎゅうで立ち飲みが当たり前だし(それはそれで好きだけれども)、そもそも食事を置いていないところが多いので、日本から来た旅行者には立ち寄りやすい店だ。というか、代官山あたりに開けば確実に繁盛するだろう。

 ロンドンに着いて最初の食事がこの店で、そのあとイギリスには10日間ほど滞在したのだけれども、こんなにフレッシュな野菜が食べられるレストランは貴重だと後々知ることになる。

 イズリントンのAngel駅を中心としたエリアは、アンティーク店やサード・ウェーヴ系のコーヒーショップやおしゃれな飲食店が点在していて素敵だった。




















●Riverford at The Duke of Cambrige
住所:30 St Peter's Street, Islington, London N1
最寄駅:Angel駅
http://dukeorganic.co.uk


2. オーガニックな・・・プロテイン?




















 
 もうひとつ、通りを歩いていて見つけた「PLANET ORGANIC」というスーパー。野菜からお菓子から日用品の洗剤にいたるまで商品は全てオーガニック(もしくは自然派)いう陳列棚は圧巻。珍しいものだと、デオドラントや生理用タンポンまで!ここでは、スポーツマンの弟へ「オーガニック・プロテイン」をお土産として購入。マッチョなプロテインのイメージを覆す可愛らしいパッケージ。弟曰く、ホエイ由来のプロテインは一番一般的なものだそう。ホエイがオーガニックならば、牛乳もオーガニック。ということは、乳牛もオーガニックで、オーガニック乳牛が食べている牧草もオーガニックなのだろうか?さすがは、オーガニック先進国イギリスである。

● PLANET ORGANIC
住所:64 Essex Road, Islington, London N1 8LR
最寄駅:Essex Road駅/Angel駅
(他にもロンドン市内に数店舗)
http://www.planetorganic.com











2016/06/23

金子光晴『マレー蘭印紀行』中公文庫























たとえ、明るくても、軽くても、ときには洗料のように色鮮やかでも、それは嘘である。みんな、嘘である。
–金子光晴『マレー蘭印紀行』中公文庫

読書会 赤メガネの会の開催レポートを担当しました。
こちらにも全文を掲載します。
公式HPもご覧ください。

http://www.akamegane.tokyo


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 そろそろ夏休みの計画を立てる時期ですね。旅先はもうお決まりですか?今回の課題図書は、シンガポール、マレー半島、ジャワ、スマトラと東南アジアを放浪した詩人の紀行文です。旅好きや旅行記好きなメンバーもいる赤メガネの会ですが「ひと癖ある作風に驚いた、戸惑った」という人が多かったようです。

 まずは、時代背景。著者が東南アジアを旅したのはおよそ80年前のことでした。戦争が始まる前の昭和初期に、当時の日本人が東南アジアの様子を伺い知ることができた意義は大きい。祖父が出征していた東南アジアの風景を知ることができた気がする、という人も。当時、外国を旅できる日本人はごくわずかでしたし、映像はおろか写真も満足にない時代に、未知なる異国を伝える作品というのは大変貴重だったと想像します。現代の日本語とは異なる独特の文体に苦労した、音読してみた、というメンバーもいました。

 詩人ならではの自然描写も印象的でした。ねっとりとした風、濁った水、光、鬱蒼としたジャングル、スコールがやってきそうな東南アジアの田舎の空、人の手が入っていない未開の自然、闇への畏怖。画家ポール・ゴーギャンが南洋の島に求めた野蛮の地はこんな場所だったのでしょうか。旅の情景を生々しいまでの鮮やかさで描き出す言葉遣いは圧巻。旅の情報がない時代に読んだら、どんなに想像を掻き立てられたことでしょう。旅先では普段よりも五感が研ぎ澄まされますが、その感覚が疑似体験できる旅行記です。

 美しい日本語に酔いしれながらも、多くのメンバーが感じた違和感。それは旅行記の醍醐味である「人情」がほとんど描かれていないという点です。著者がその場にいるにもかかわらず、語り口に距離がある。鼓動を消す感じが独特。主観というノイズを排した旅行記。ただカメラを長回ししている映像を見ているようだ。人の描写がことごとく暗い。それで結局、奥様とはどうなったの?
 
 ・・・本編のあとの解説を読んで目を見開いたのですが、著者が足掛け5年にも及ぶ海外放浪を決意した理由というのが「奥様の気持ちを取り戻すため」だったのです。当時、三千代夫人には恋人がいました。その三角関係を解消できるのであればと思い立ったものの、旅の中で核心に触れる会話はなかったとのことです。妻との会話がない中で見えた緑、と書かれていたらもう少し感情移入できたのにという意見や、険悪な夫婦の珍道中エピソードが聞きたかったという感想も(笑)。もともと私的な備忘録として書かれた本書。それにもかかわらず夫婦の温度を感じさせないのは、あえてそのように書く理由があったのでしょうか。解説に書かれた旅の事情を知って読んだら、また違う景色が見えてきそうな紀行文でした。でも、せっかく東南アジアを放浪するのなら、夫婦仲良く旅したいものです。

2016/05/12

ボタニカル・ライフ始動!






















畑やベランダでせっせと栽培に励むのは、もちろん収穫して食べるためです。それなのに、食べられないものを育てるガーデニングは「なんと崇高な趣味なんだろう!」と思っていました。でも先日、夏野菜の苗を物色している時に目が合ってしまいました。多肉植物です。よく見たらめっちゃカワイイではないか!と。























ということで「ボタニカル・ライフ」に必要な道具を購入しました。























・・・そして、さっそくバラバラ殺人事件みたいになっていますが、そういう趣味ではありません。彼らは、1枚の葉から根と芽を出して増殖するらしいのです。普通野菜なら種から苗にして、果樹なら挿し木で増やしますが、葉っぱからいきなり増殖するなんて、なんだか異文化過ぎて農ガールは混乱しております。しかも水分は週に1度で十分。増殖期間は葉っぱに蓄えた水分だけで芽を出すなんて、なんということでしょうか。


手が掛からないということは、すなわち彼らが発信するメッセージを汲み取るのが難しいということでもあります。我が家の同居人たちは、水が欲しいだの、植木鉢がきついだの、栄養が足りないだの、ベランダの照り返しが暑いだの、やかましく訴えてきますが、それはそれで要望に答えてさえいれば機嫌良くしています。でもこの無口な新入りはそうはいかなそうです。それも、ひとつチャレンジです。























目標は宝石箱のような寄せ植えを作ること。主人には「そのうち、美味しそうとか言い出すんじゃないの?」と疑われていますが、いや。食べることをゴールとしない崇高な趣味、ガーデニングの世界に足を踏み入れます!

2016/05/07

台湾で現地のライブハウスに行く

4/13(水)台湾 day1 つづき

鶯歌で器を探し、地元の食堂で夕食を取ったあと、台北に戻ってきた。次は、旅の目的その2「現地のライブハウスに行く」である。

SUMMER SONICにはアジア圏のバンドが出演するステージ(Island Stage)があって、USともUKとも違う新しい音楽に出合える。去年、そのステージを眺めながら「次に海外旅行をするときは、現地のライブハウスに行ってみたい」と思っていた。(それに、初日の夜がひとり歩きなのでライブハウスなら安心だろう、というのもある)

台北市内にあるライブハウスのウェブサイトでスケジュール(=節目單)をチェックし、日程が合うライブに行ってみることにした。

●ライブハウス「河岸留言」


チケット予約には、台湾発の音楽配信サービスKKBOXがやっている「KKTIX」というチケットサイトを使った。

●KKTIX


これがKKTIXの予約画面なのだが、なんと日本語表示があり、代金はクレジットカードでオンライン決済できる。外国人であればパスポート番号を入力するが、それ以外は国内のチケットサイトとほぼ変わらない。チケットの受け取りがコンビニで出来るところまで同じだ。


チケットの控えを印刷していき、ファミリーマート(=全家)のFamiPortで発券する。台湾のファミマは八角のような香りが漂っていたが(店内で売っているフードの香りだと思う)、それ以外は日本と変わらない。店舗は台北市内のいたるところにあった。


・・・でも画面は中国語表記だけ。「やり方わかりますか?」と控えを見せると、親切な店員さんが操作をしてくださった。ありがとうございます、すごく助かります。(台湾の方は皆さん本当に親切で助けられた)


日本円で100円ほどの発券手数料を払い、レジで発券。何から何まで日本と変わらないことに驚いた。もし台湾で現地の音楽を楽しみたいなら 、KKTIXはとても便利だ。観光地巡りだけでは物足りない人におすすめ。

台湾で見たライブについては、次の記事で。




2016/05/06

生オケ・シネマ:チャップリン『モダン・タイムス』

ゴールデンウイークはBBQをしたり、山に登ったり、夏野菜の植え付けをしたり、キウイの剪定をしたり、アウトドアな活動ばかりになってしまった。連休の最後に楽しみにしているのが、チャールズ・チャップリンの代表作である映画『モダン・タイムス』(1936年)のライブ・オーケストラ上映だ。

チャールズ・チャップリン(1889-1977)と聞けば「歴史上の人物」と思っていたのだが、80年前の映画『モダン・タイムス』を見返してみると現代のビジネスマンの姿に重なるところが多かった。出勤ラッシュのシーン、ランチタイムのベルが鳴ると一斉に昼食を食べ始めるシーン、思い描く夢はマイホーム。去年あたりからアルバム再現ライブや名画の生演奏上映があちこちで行われているが、過去のものと決めつけていた作品も、生の音楽で再現すれば2016年の今でも新鮮な感動を与えられる。それはチャップリンの『モダン・タイムス』でも例外ではなさそうだ。

チャップリンとミッキー・マウスはどこか似ていると思っていた。
山高帽に、ちょび髭、ステッキ、どた靴のスタイル。次々にハプニングが降りかかる物語のせわしなさと滑稽さ。
チャップリンのデビュー作『成功争ひ』と、チャップリンがチャップリンたる格好になった第2作『ヴェニスの子供自動車競争』の公開は1914年。チャップリンのヒット作『黄金狂時代』は1925年公開。
一方、ミッキー・マウスが初めて登場した『蒸気船ウィリー』の公開は1928年だ。

先月、生オケ・シネマ上映に先駆けたトークイベントが行われた。その時の登壇者であったサウンド&ヴィジュアルライターの前島秀国さんにチャップリンとミッキー・マウスの関連性について尋ねたところ、こんなお話をしてくださった。

 当時のチャップリンとディズニーは比較的良好な関係を築いていたし、チャップリンの時代の映画業界は現代のそれと比べとても狭い世界だったので、互いに影響し合うことが多々あった。『モダン・タイムス』で音楽指揮を担当しているのはアルフレッド・ニューマンで、ニューマン・ファミリーはディズニー映画の音楽を多数手がけている。
 作曲家としての顔を持つチャップリンは、人物の動きに合わせた音楽を付けたが、そのことを映画用語では「ミッキーマウシング」と呼ぶ。

制作において完璧主義者だったというチャップリン。彼の作った音楽を、映像に合わせて生演奏するなんて至難の技だ。チャップリンの生オケでタクトを振れる指揮者は世界にたった4人しかいないそうだが、今回の生オケ・シネマ『モダン・タイムス』ではその一人でチャップリンの研究家でもあるカール・デイヴィスが指揮をする。
80年前の人々が映画館でゲラゲラ笑いながら観た『モダン・タイムス』を、2016年の自分に重ねながら大スクリーンで(しかも当時より高画質、当然ながら高音質)観られるのがとても楽しみだ。

【詳細】
新日本フィルの生オケ・シネマ〜公開80周年記念〜
チャップリン《モダン・タイムス》
日時:5月7日(土)昼公演14:00 / 夜公演18:00
場所:すみだトリフォニーホール
http://plankton.co.jp/moderntimes/index.html

『モダン・タイムス』の生オケ・シネマ上映にあたり、恐れ多くも推薦文を書かせていただきました。
http://plankton.co.jp/moderntimes/suisen.html


2016/04/29

読書会「赤メガネの会」HP
















読書会「赤メガネの会」のHPが出来ました!
あやしい集団ではございません(笑)先日第100回を迎えました。今までの課題図書のリストや、読書会レポートなどがアップされています。ご覧ください。
http://www.akamegane.tokyo

2016/04/25

陶磁器の街「鶯歌」で器を探す





4/13(水)台湾 day1

久しぶりにバックパックを背負い、台湾に到着。空港の外に出ると、雨が降っていて蒸し暑く、まるで梅雨を先取りしたかのような気候だ。念のためにと持ってきたフジロック用のレインポンチョのおかげで、バックパックがびしょ濡れにならなくて助かった。ここは東京と変わりない都会だけれど、極彩色のてるてる坊主姿も旅人だから仕方ない、ということにする。まずは士林駅近くの宿にチェックインし荷物を置く。迎えてくれたスタッフの女性が「今日が一番天気悪いみたいですよ」と言っていた。小笠原ちゃんは明日の朝に到着するので、今日だけは一人歩きだ。この天気なのでどうしようか少し悩んだが、どこに行っても雨には変わりないので、やっぱり予定通り出かけることにした。


電車に揺られること30分。やってきたのは「鶯歌」という郊外の街だ。ここは陶磁器の街で、焼き物のお店が何十軒と並んでいる。茶器、皿、グラス、壺、花瓶・・・日本の100円ショップに売っていそうなものから、1つ数万円もする器まで、ストリートを往復すればなんでも手に入る。中でもこの街に売られている商品のおよそ8割を占めるのが茶器だ。様々な形をした小さな湯呑み、急須、テーブルに敷くマット、茶匙などなど。そしてお店の奥の方にはテーブルがあって、地元のおじちゃん達が楽しそうにお茶飲みしていたりする。すでにどのお家にもあるはずなのに、それでもまだ茶器が売れるのか?台湾の人は本当にお茶が大好きなんだなと感心する。





















焼き物の店を何軒か回るうち、青磁器の淡いブルーに目が止まった。青磁は中国古来の焼き物で、ライトにかざすと光が透けて見えるというのに驚く。「実はとても丈夫なんですよ」とお店の人が叩くと澄んだ音がする。本当は模様が透けるマグが欲しかったけれど、やっぱり日本に持って帰るのに心配なので、頑丈そうなお花のボウルを一つ買うことにした。ポテサラやきんぴらをがっつり盛って、普段使いしようと思っている。

右の小さな器は青磁ではないけれど、鶯歌に窯を持つ作家のもの。ちょっとした豆皿として使いたいと思って買ったのだけれど、こんな形をしていながら本来はお茶を飲むための器だそうだ陶芸家は英語に直訳すると"potter"だが、お店の人が"teacher"と言っていたのが印象的だった。日本人も台湾人も、作家を「師」「先生」と敬うのは同じなのだと嬉しくなった。

青磁器に翡翠に、台湾の人にとって特別な色なんだろう。飛行機が着陸する前、眼下に見えた台北の街。民家の屋根も翡翠色が多かった。







2016/04/24

台湾へ



台湾へ行ってきた。4/13(水)〜16(土)の3泊4日。

そもそもなぜ台湾かというと、JFN「News Delivery」の木曜日ADを担当してくれていた小笠原ちゃん(27)が世界一周に旅立つ決意をしたことに端を発する。南極に行くのが夢だった彼女がある時その費用を計算してみたところ「世界一周と大して変わらないじゃないか」と気づき(まずそこに驚く)、27歳=沢木耕太郎的「旅の適齢期」の彼女は「行くなら今だ」と思い立ったらしい。旅人気質の私は、生来インドア気質の彼女が下した決断に大賛成し、(これも沢木先生の真似っこだが)早々に米国ドルで餞別を渡していた。

けれども問題は、彼女が今まで一度も海外に行ったことがないということだった。いつもふざけたTシャツを着ているけれど根はとっても真面目な彼女は、世界一周前の練習旅行を称して台湾行きの格安チケットを取っていた。そこで、私が番組卒業旅行の名目で便乗させてもらい、2人で台湾に行くことになったというわけだ。
 




















出発の1週間前に集まった私たち。小笠原ちゃんは、作戦会議の場所として表参道にできたHISのトラベルカフェを見つけてくれ、【ついに初海外!台湾旅】という周到にスケジュールが組まれた旅のしおりを送ってくれ、さらには宿のブッキングまでしてくれるという、さすがはスーパーADだと唸る仕事ぶり。いつもは一人旅、もしくは誰かと行く旅行の場合もプランニングをするのは大抵私なので、なんだか新鮮でいい。でもいつものように甘えてしまってせっかくの初海外旅行が楽しめないのでは申し訳ないので、現地ではあまり負担をかけないようにしよう、と思う。


さて、年末セールで取ったという小笠原ちゃんの格安航空券だが・・・

4/13(水) 22:15 成田発→翌0:55 台北(桃園)着
4/17(日) 深夜1:55 台北(桃園)発→6:10 成田着

という、まるで大学生のようなハードなスケジュール。台北に着いたら空港内で仮眠し朝一から行動開始。最終日は夜までめいいっぱい遊び、飛行機で仮眠し帰宅するという計画だそうだ。ううむ・・・「稲葉さんと一緒なら安心だ!」と喜んでくれた小笠原ちゃんには申し訳ないが、検討の結果、

4/13(水) 10:05 羽田発→12:30 台北(松山)着
4/16(土) 16:45 台北(松山)発→20:50 羽田着

という、年齢相応のフライトにさせてもらった。

「応対を何度もシュミレーションしている」という出入国審査の様子が見られないのが大変残念だが、4/14(木)の朝に宿で落ちあうことになった。現地集合・現地解散の台湾旅行。でも限られた日程の中でお互い半日ほど一人で過ごす時間があるのは、小笠原ちゃんにとっても世界一周のときの練習になるし、私の趣味に付き合わせてもかわいそうなので、悪くないのではないか。

ちなみに、私の旅の目的はというと
・リノベーションされた建物を見学する
・現地のライブハウスに行く
・レコードショップでジャケ買いする(最終日がRecord Store Day)
・台湾の現代アートを見る
・骨董街に行く
・夜の九份の景色を眺める
・昔映画で観たローカル線の街を訪れる
・朝市で買い物する
・台湾コーヒーの豆を買う
・カラスミを大量購入する

こんなところだろうか。
もちろん、夜市のグルメは折り込み済みである。

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●小笠原ちゃんのblog●
ぐるーりとジャーニー〜食べたくて 見たくて 世界一周〜
「楽しい作戦会議でルンルンからの、SIMフリースマホが反応しなくて絶望」
http://blog.livedoor.jp/grurito/archives/58036632.html



2016/04/10

作戦会議



ラジオ番組「News Delivery」の放送終了から1週間。
表参道のとある場所に集合した、木曜AD小笠原ちゃんと、DJの私稲葉の会話。
レコーダーをまわして、一体何をしているのか・・・?

あなたからのお便りお待ちしています。

Tomomi Inaba on "note"
https://note.mu/inabatomomi


News Deliveryありがとうございました!


















































1週間たちましたが、改めて。
3年間お世話になったNews Deliveryが放送終了しました。
リスナーの皆さん、スタッフ、関係者の皆さん、ニュース解説を担当してくださった、入江たのしさん、吉田暁央さん、本当にたくさんの方に支えられて乗り切ることができました。この番組を担当したことで、ニュースを伝える面白さを知ることができました。
たくさんの音楽に出会うきっかけにもなり、たくさん勉強させていただきました。最終回、たくさんのメッセージありがとうございました。少しずつですがお返事を書いていますので、ステッカー到着までもうすこしお待ち下さい。
また、音楽の鳴っているところでお会いしましょう。


2016/04/05

Bob Dylan@Bunkamuraオーチャードホール





















春はディランに限る。
Bob Dylan@Bunkamuraオーチャードホール。

ステージ上にはヴィンテージらしきアンプのほか、エジソン電球や石膏の彫刻など。前回の春のZeppよりも格段に音質がいい。(初めてのディランに息荒く最前列を陣取ったからからかもしれないが)スピーカーから客席に向けて吐き出される音ではなく、ステージ上で鳴った音が共鳴しているような、いい音が鳴っていた。

『Tempest』からの曲をやりながら、シナトラ・トリビュートアルバムの曲、そしてTangled Up In BlueやBlowin' In The Windなど往年の名曲大サービスまで。
フィドルが入った風に吹かれては、前回ともオリジナルとも全く違うアレンジでとても素敵だった。強烈なプロテクトソングにも、明日があるさ的にも、あがらえない理不尽をただ受け止めているようにも聴こえるこの歌。今夜は、絶望にかすかな希望を与えてくれるような、そんな感じだった。何度も復唱している詞の持つ力は、どんなアレンジになろうとも衰えない。そしてこの先も、きっと繰り返しこの歌に救われるのだろうなと思った。

ディランの声はシナトラのような艶やかさはないけれど、私にとっては心地がいい。かつてラジオで放送されていた彼の番組「Theme Time Radio Hour」をイヤホンで聴きながらしばしば眠りに落ちたことを思い出す。時おり目を閉じながら、至福の時間を堪能してきた。

ディランは目が良いんだろうな。彼のステージは本当に、暗い。