先月まで横浜のBankARTで開催されていた川俣正展。アブダビで彼の作品を観たところだったので、日本でちょうど個展がやっていると聞き行ってきました。
これは外壁ですが、BankARTの建物を木材が浸食しているよう。
その木材は何かというと、フォークリフトで荷物を運ぶときに使う木の台。
BankARTはもともと倉庫だったので、この素材を選んだのだろうか。
まるで木材に意思があるかのような、とてもインパクトのある作品でした。日を追うごとに作品はどんどん変化していくというのもおもしろい。チケットはパスポート制だったので、2ヶ月ほどある会期中、日々育っていく作品の様子を見に何度も訪れて欲しいというもくろみがあったようです。
こちらは室内。天井に木のサッシが設置されています。床に木枠の影が落ち、がらんとしているコンクリートの空間に変化を与えていました。
川俣作品は、極めて「建築的」だと思います。
それ自体がどうというよりも、頭上にサッシの覆いがあることでそこに「場」が生まれる。無機質な元倉庫の空間に意味づけがされる。
外壁の作品であれば、木材が張り巡らされていて人の目を引く。似たり寄ったりの建物が並んでいる横浜の港湾エリアで、BankARTだけスポットが当たる。それによって、街の景色に変化がうまれる。「なにかあるぞ」と人がやってくるので、人の動きが変わる。「しかも、どうやらこの木材は日々育っているらしい」と、初めて訪れた人に何度も足を運ばせる。
制作現場にはその街の学生やボランティアを巻き込んで、作品を作るプロセスも大事にする。
これはAbu Dhabi ART2012でエントランスホールに設置された椅子の作品。ぱっと見「塩田千春さんみたいだ」と思ったのだが、横浜の企画展を見て「全然違うじゃないか!」と思うようになったのが自分の中で面白かったです。
ちなみに、塩田さんの作品はこちら。
川俣作品は、人が集まる場を作る。そこが待ち合わせ場所になったり、休憩所になったり。作品の中でギャラリートークをやったりもしていました。一方で塩田作品は、その窓枠の向こうにある遠い記憶を呼び起こさせるようなインスタレーションなのです。
今回のチケットは3冊のカタログ付きでした。2冊はその場でもらい、3冊目は会期が終わった後に全行程をまとめたものを製本して送ってくれるそうです。おもしろいね。
この秋から冬にかけて縁があった川俣アート。会期が終わったあともまだ、つなぎとめられております。