第48回赤メガネの会が開催されました。
今回の課題図書は、トーマス・マン著『トニオ・クレーゲル/ヴェニスに死す』。
「極めてドイツ語的な日本語訳」とでも言うべきか。私の読書力ではなかなか難読な一冊でありましたが、ドイツ人作家であるトーマス・マンの世界観を正しく訳するとこうなるのだろうと推測。読んでよかった作品です。
俗人と芸術家という2つのアイデンティティの狭間に揺れる作家トニオの心情を描いた『トニオ・クレーゲル』。ヴェネチアの街で美少年の美しさに心を奪われた初老の作家アシェンバハの悲劇を描いた『ヴェニスに死す』。
これぞ純文学!こんなにも、美しさを表現する言葉を持ち合わせているなんて羨ましい。
トーマス・マンの文章は、書くというよりも「描く」と言った方が適切だと思う。
ヴェニスで蔓延するコレラに命を脅かされながらも、美少年から目を離すことの出来ないアシェンバハ。なぜヴェニスを去らなかったのか?そう言ってしまえばおしまいなのだけれど、芸術に陶酔し、芸術に生きる初老のアシェンバハの心情に、ひどく感動してしまった。
それは、身を削るように音を鳴らし命を絶ったアーティストたちにも似ている。読書レベルが上がったらもっと深く味わえると思うので、読書人生の中で、また戻ってきたいと思います。