Turkish Pottery, 2016

Turkish Pottery, 2016

2013/02/01

三浦しをん『舟を編む』

 

辞書は、言葉の海を渡る舟だ。海を渡るのにふさわしい舟を編む。
                         ―三浦しをん『舟を編む』光文社

去年の本屋大賞だったこの作品。先に読んだ人からも「言葉を使う仕事をしているなら、読んでおいていい本だよ」と言われ、読もう読もうと思っていてやっと読みました。ある出版社の辞書編集部が『大渡海』という辞書を作るお話です。

言葉の意味を説明するのは本当に難しいですね。
たとえば、【右】体を北に向けたとき東にあたるほう とか。
作品の中の編集部の人たちは、日々気になる言葉があるとその都度メモするんです。言葉マニアと言ってもいいかもしれない。それから紙にもこだわりがあって、辞書はめくった時の「ヌメり感」がとても重要なのだとか。紙の辞書は高校以来使っていないので、なんだか申し訳なくなりました・・・。

この本を読んでいて、高校で現代文を教わった杉浦先生を思い出しました。
先生は、授業で電子辞書禁止。教科書の中に出てくる説明できない言葉は紙の辞書で徹底的に調べて予習してくること。抜き打ちで意味を聞かれて答えられなければその授業は立って受けなさい、という厳しい先生でした。
言葉を使う仕事に就いた今、杉浦先生にはとても感謝しています。
ときには枕にしていた国語辞書の匂い、好きだったな。

私は、編集部の人のように愛を持って言葉を使っていただろうか。
数多くの中で、なぜ筆者はあえてその言葉を選んで使ったのかを考えたことがあるだろうか。
読み進めながら自らを省みつつも、日本語がたまらなく愛おしくなる作品でした。


春に映画が公開になるそうで。予告編だけ観ましたが、編集部の薄暗い空気や、主人公が下宿している古い家、擦り切れた本や紙の質感などがいい具合に盛り込まれていて、ワクワクしました。
松田龍平さんのまじめ君役も楽しみです。