唯一わたしがやりたかったのは、人々に笑いという救いを与えることだ。
ユーモアには人の心を楽にする力がある。
アスピリンのようなものだ。
百年後、人類がまだ笑っていたら、わたしはきっとうれしいと思う。
ーカート・ヴォネガット『国のない男』 NHK出版
読書会仲間の山川牧さんからいただいた、ヴォネガットの本。
自らの戦争体験を、出来るだけ淡々と、シュールなユーモアを交えながら、しかもSFチックに書いた『スローターハウス5』が好きで、その好きだと思う部分が凝縮された、抱きしめて眠りたくなるような1冊。
そもそもヴォネガットは、村上春樹が影響を受けた作家ということで手に取ったのだけれども、
村上春樹が5/6に京都大学で行った講演(私は抽選に外れた)の発言要旨を読んでいて、その影響を確信する。
僕の本を読んで泣きましたと言う人がときどきいるけど、
僕は笑いが止まらなかったと言われる方がうれしい。
悲しみは個人的なところに密接につながっているが、笑いは関係ない。
やっぱりユーモアの感覚が好き。
書くときはなるべくユーモアをちりばめたい。
ユーモアと言っても、涙が出るほどゲラゲラ笑うという種のものではなく、ギチギチに詰め込んだ本棚から1冊引き抜いてかすかな隙間ができるみたいな、フッと心の緊張がとれるような、そんなオシャレなユーモアが大好きだ。
これからは特に、ちりばめられた宝物に引っかかりながら村上作品を読みたい。