Turkish Pottery, 2016

Turkish Pottery, 2016

2012/09/26

旅の適齢期

 
すると、その刑事はこういったのだ。
"Too late."
もう遅すぎる、と。
20代を適齢期とする旅は、やはり20代でしかできないのだ。
        ―沢木耕太郎『旅する力―深夜特急ノート』新潮文庫


『深夜特急』の沢木耕太郎さんが“旅論”を綴ったエッセイを、読み終えたところです。

沢木さんが仕事を辞めて香港~ロンドン陸路の旅に出かけたのは、26歳の時。
それを読んで私は、「まさに今じゃないか!」と。
しかも沢木さんは、26歳は旅の適齢期だと言っている!

なぜか。

当時は、未経験という財産つきの若さがあった。
しかし逆説的ではあるが、未経験者が新たな経験をして、それに感動することができるためには、あるていどの経験が必要だった。つまり、経験と未経験のバランスがとれた26歳という年齢が「旅の適齢期」なのだそうだ。
もちろん30代には30代の旅、50代には50代の旅があるけれど、あの『深夜特急』の旅は26歳でしかできなかった、と旅の巨匠。

それを読んだ私は、ちょっとだけガッカリした。
なぜなら、数日前に飛行機のチケットを取ってしまったばかりだったから。
そう。カタール~モロッコ旅ですっかりアラブ圏に魅せられてしまった私、来月末から2週間、トルコ~UAEを旅することにしたのです。この本をもう少し早く読んでいたら、もしかしたらユーラシア大陸半年間の旅になっていたのかなぁと。

でも、旅って呼ばれる時が行くべき時だって思うから、いつでも行けるように資金を貯めつつ、その時を待とうと思います。

*   *   *

今回「呼ばれた」行先はトルコ。パムッカレに行ってみたい母と行く初の海外旅行です。母は青春18きっぷで本州を1周した強者。しかしながら海外は何十年ぶり。しかも海外は「船」でしか行ったことがないという、何とも変わった旅人なのです。

いつもの一人旅と違って母の面倒も見なくちゃいけないから、チケットを取るとき「ツアーにしちゃおうかなぁ・・・」という考えが一瞬頭をよぎったのですが、沢木先生の旅論に触れ、やっぱりそうしなくてよかった!と胸をなで下ろす。

前回のモロッコ旅は、行き当たりばったりだったからこそ友達になれた人がいっぱいいたし、出会えた景色やハプニングがあったんだ。ドーハでアジアカップを見られたのも、たまたまトランジットが20時間もあったからだったしな。うん、そうだ、そうだ。

今回もたまたま安かったチケットがアブダビ経由の便なんですが、帰りがちょうどアートフェアの開催期間中らしいので、UAEにストップオーバー予定。
本にも出てきましたが「ストップオーバー」とは、24時間以上の乗継があること。ストップオーバーのできるチケットをうまく使えば、格安で2か国以上を旅できてしまうのです。
云わば「誘惑」です。
アブダビと言えば、ルーヴルやグッゲンハイムの分館が世界で初めて作られるという、今のアートシーンでかなりホットな場所。これは行かない理由はないでしょ!

さて。果たしてover 50の母は大丈夫なんでしょうか?
まあ、旅は道連れ。なかなかこんな機会もないだろうから、とことん20代の旅に付き合ってもらおうではないか。むふふ。