Turkish Pottery, 2016

Turkish Pottery, 2016

2012/09/29

鋤田正義展―SOUND & VISION

 
最近はCDを買わなくなったという人も多いかもしれませんが、ダウンロードした音楽にはないCD(もしくはレコード)の良さは「ヴィジュアル」があるところではないでしょうか。
 
音楽に目覚めた10代の頃、ベッドに横になってCDを聴きながら、ブックレットに載せられた大好きなアーティストの写真をいつまでも眺めていました。きちんとCDで聴いた音楽は、ふたたび耳にした時、そのヴィジュアルとともにより鮮明に蘇ってくるもの。
もしあなたの頭に思い浮かんだジャケット写真があるとするなら、それはもしかしてこのカメラマンが撮った写真かもしれません。
 
現在、東京都写真美術館で『鋤田正義展―SOUND & VISION』が開催中。
アーティストのジャケットやライブの写真や広告写真、テレビコマーシャルや映像作品など幅広いフィールドの第一線で活躍している写真家、鋤田正義さんの回顧展です。
作品の被写体になっているのはDavid BowieやT. REX、Iggy Pop、布袋寅泰、忌野清志郎、YMOなど「あぁ、この写真見たことある」というアーティストばかりで、音楽好きにはたまらないと思います。
 
高校生の頃から写真を撮っていた鋤田正義さん。あるときDavid Bowieを見て「化粧をしている男がいるのか!」と衝撃を受け、そのまま飛び込みで行って写真を撮らせてもらったことがすべての始まりだったそうです。David Bowieの名盤『LOW』に収録された「SOUND & VISION」がタイトルになっているのもそのためです。
 
展示されている写真を観ていると、アーティストへの憧れの気持ちはこういったヴィジュアルがかなり大きく影響しているということに気づきました。鋤田さんはまさに、憧れを作り出す写真家。
会場には「Rock好きです!」という服装のお客さんも多くて、さすがに話しかける勇気はないけれど、きっと音楽トーク出来る人ばっかりなんだろうな・・・とちょっともどかしい気持ちもありながら、そういうところまでとてもワクワクする写真展でした。
 
『鋤田正義展―SOUND & VISION』は、東京都写真美術館で今週の日曜日まで。
 

2012/09/26

旅の適齢期

 
すると、その刑事はこういったのだ。
"Too late."
もう遅すぎる、と。
20代を適齢期とする旅は、やはり20代でしかできないのだ。
        ―沢木耕太郎『旅する力―深夜特急ノート』新潮文庫


『深夜特急』の沢木耕太郎さんが“旅論”を綴ったエッセイを、読み終えたところです。

沢木さんが仕事を辞めて香港~ロンドン陸路の旅に出かけたのは、26歳の時。
それを読んで私は、「まさに今じゃないか!」と。
しかも沢木さんは、26歳は旅の適齢期だと言っている!

なぜか。

当時は、未経験という財産つきの若さがあった。
しかし逆説的ではあるが、未経験者が新たな経験をして、それに感動することができるためには、あるていどの経験が必要だった。つまり、経験と未経験のバランスがとれた26歳という年齢が「旅の適齢期」なのだそうだ。
もちろん30代には30代の旅、50代には50代の旅があるけれど、あの『深夜特急』の旅は26歳でしかできなかった、と旅の巨匠。

それを読んだ私は、ちょっとだけガッカリした。
なぜなら、数日前に飛行機のチケットを取ってしまったばかりだったから。
そう。カタール~モロッコ旅ですっかりアラブ圏に魅せられてしまった私、来月末から2週間、トルコ~UAEを旅することにしたのです。この本をもう少し早く読んでいたら、もしかしたらユーラシア大陸半年間の旅になっていたのかなぁと。

でも、旅って呼ばれる時が行くべき時だって思うから、いつでも行けるように資金を貯めつつ、その時を待とうと思います。

*   *   *

今回「呼ばれた」行先はトルコ。パムッカレに行ってみたい母と行く初の海外旅行です。母は青春18きっぷで本州を1周した強者。しかしながら海外は何十年ぶり。しかも海外は「船」でしか行ったことがないという、何とも変わった旅人なのです。

いつもの一人旅と違って母の面倒も見なくちゃいけないから、チケットを取るとき「ツアーにしちゃおうかなぁ・・・」という考えが一瞬頭をよぎったのですが、沢木先生の旅論に触れ、やっぱりそうしなくてよかった!と胸をなで下ろす。

前回のモロッコ旅は、行き当たりばったりだったからこそ友達になれた人がいっぱいいたし、出会えた景色やハプニングがあったんだ。ドーハでアジアカップを見られたのも、たまたまトランジットが20時間もあったからだったしな。うん、そうだ、そうだ。

今回もたまたま安かったチケットがアブダビ経由の便なんですが、帰りがちょうどアートフェアの開催期間中らしいので、UAEにストップオーバー予定。
本にも出てきましたが「ストップオーバー」とは、24時間以上の乗継があること。ストップオーバーのできるチケットをうまく使えば、格安で2か国以上を旅できてしまうのです。
云わば「誘惑」です。
アブダビと言えば、ルーヴルやグッゲンハイムの分館が世界で初めて作られるという、今のアートシーンでかなりホットな場所。これは行かない理由はないでしょ!

さて。果たしてover 50の母は大丈夫なんでしょうか?
まあ、旅は道連れ。なかなかこんな機会もないだろうから、とことん20代の旅に付き合ってもらおうではないか。むふふ。

2012/09/24

【実験】太陽の熱で甘酒はかもせるのか?

残暑厳しい秋の始まりに、ベランダである実験を試みました。
 
 
題して「太陽の熱で甘酒はかもせるのか?」
 
 
ジリジリと照りつける太陽で、ベランダはまさにヒートアイランド。
今まで甘酒は炊飯器で作っていましたが、体感温度40度オーバーのうちのベランダならもしかしてと思い挑戦。
 
熱が伝わりやすいよう、平たいタッパーを使います。
米麹と45度くらいのぬるま湯を混ぜてセット。
この日は1日晴天だったので、朝10時ころから日暮れまで太陽を浴びせ続けました。
 
 
その結果・・・・




 
じゃーーーん。
 
 
ちゃんと発酵して甘くなりましたー!
オリゼー、よくやったぞー!
 
名付けて「100%ソーラー酒」。ソラッ酒。
 


国のエネルギー戦略、方針がどうもブレブレのようですが、
「太陽のエネルギーも活用していける日本になろうぜー」という一市民からのささやかな提案でした。

2012/09/23

ハックルベリイ・フィンの冒険

 
 
「よし、それじゃあ僕は地獄へ行こう」―こう思うと、僕は紙を引き裂いてしまった。
―マーク・トウェイン『ハックルベリイ・フィンの冒険』新潮文庫
 
読書会の課題図書で読みました。
『トム・ソーヤの冒険』(写真左)は誰もが知っている作品かと思いますが、実はアメリカ文学界においては、その続編『ハックルベリイ・フィンの冒険』の方が高く評価されているってご存知でしたか。
 
トム・ソーヤ一味のハックは、ぼろの服を着て、学校にも行かず、空樽の中に眠り、はだしで遊びまわっている自由児。『ハックルベリイ・フィンの冒険』は、前作で宝物を掘り当てお金持ちになるものの、堅苦しい生活に耐えられなかったハックが再び筏に乗って冒険に出る、というところから物語が始まります。
 
ミシシッピー川、難破船、暴風雨、サバイバル生活といったワクワクドキドキの冒険をベースに話を進めながら、人間関係の面倒くささやいがみ合い、世間一般と自分の価値観のギャップ、仲間を大事に思う気持ちなど、私たち現代人にも思い当たるテーマも同時に描かれているところが、よりこの作品を味わい深いものにしているのではないかと思います。
 
私が一番好きなのは、最初に書きましたが、脱走した黒人奴隷ジムを守ろうと決意したハックのセリフ。この本、舞台になっているのが奴隷解放宣言が出される前のアメリカというのも一つのキーポイントです。
ジムはずっと一緒に旅をしてきた仲間だけど、脱走奴隷を見つけて通報しないと自分が捕まってしまうかもしれないという葛藤。一度は通報するために手紙を書くものの、思い直してそれを破るんです。相手がどんな身分であろうと大切な仲間だから、彼をかくまうことで地獄に落ちるならそれでいい。少年の純粋な人間愛に心を打たれるシーンです。もしハックが少年ではなく大人だったら、ジムとの友情を築けなかったかもしれない。
海賊や山賊にあこがれるトムとハックですが、真似して嘘をついたり物を盗んだりはするものの、人への愛はちゃんと持っているからどこか可愛いくて憎めないのも良いです。
 
読書会メンバー全員が、いままで抱いていたトム・ソーヤのイメージとちょっと違ったと言っていたので、アニメのトム・ソーヤやディズニーランドのトム・ソーヤ島のイメージしかないという方は、原作を読んでみると面白いと思いますよ。
 
 
本好きな男女3人が、渋谷のカフェの片隅で始めた読書会「赤メガネの会」も、ついに第40回を数えました。レギュラーメンバーも増え、初期の頃よりずっと深い議論が交わされています。
次回も楽しみ。

2012/09/12

2012/09/10

第39回赤メガネの会

 

 
 
 読書会が開催されました。
 
今回の課題図書は、村上春樹『風の歌を聴け』講談社文庫。「春樹の夏」になっている私の希望で、村上春樹のデビュー作&群像新人賞受賞作をみんなで読みました。
 
「この話は1970年の8月8日に始まり、18日後、つまり同じ年の8月26日に終る」
 
21歳大学生の「僕」が海辺の町でビールばっかり飲みながら、友人の「鼠」やレコードショップで働く女の子と過ごした夏が描かれている作品です。
 
 
春樹が世界で評価されている理由とは何でしょう?
 
「ユニバーサルな文章だから」という意見に私は納得。
世界各国どんな文化の人でも同じ意味で理解できる言葉選び、つまり日本人ならではのわびさび的表現でないので、翻訳しやすいのではという意見があがり、ふむふむ。どこか淡々とした印象を受けるのは、そういうことなのかも。
舞台になっている海辺の街、私は神戸っぽいと思ったのですが、別にロサンゼルスでもハワイでもよさそう。どこか海外っぽい感じもするんです。

 
 
それじゃあ、熱狂的な村上ファン=ハルキストが多い理由とは?

これはまだはっきりした答えがわかりません。
ほかの作家が扱うテーマでも、違う見方をさせてくれるというのはそうだと思う。
現実なのにどこか非現実なというか、浮世離れしたといったらいいのか、そんなところをどう受け止めたらいいのか、まだハルキストになりきれない自分がいます。もちろん雰囲気では楽しめるのですが、それだけではハルキストの皆さんが「春樹最高!」となる理由としては不十分なのではないか。世界の村上が「雰囲気モノ」であるはずはない!
まだ数作品しか読んでいないので、ここはストイックに答えを追い求めていきたいと思っています。

・・・もしかしたら、すべてを与えてくれないところが、ハルキストを増殖させる要因なのか?
そんなことを思いながら、これから青春3部作の3作目『羊をめぐる冒険』に取りかかります。
まだまだ私の「春樹の夏」は続きそうです。