クリスチャン・ボルタンスキー「心臓音のアーカイブ」
世界中の人の心臓音が聞ける小屋が豊島にある。心臓の鼓動はひとりひとり違うんだと初めて知った。力強く血液を押し出している心臓もあれば、時計の秒針のように控えめなリズムを刻んでいる心臓もあって、まるで指紋のよう。私の心臓は、お母さんのおなかの中で形作られた時から休まずに動き続けているのに、24年間その存在を意識することはあんまりなかったかもしれない。誰かの心臓音が鳴り響く小屋の中で、それとは別に、自分の胸の中で刻まれている鼓動を感じる。私は私でしかなく、確かに生きているんだなぁと思うと嬉しくなった。
キャメロン・ロビンス「潜在意識下の海の唄」
豊島の甲生の海岸にあるのは、パイプオルガンのようなこの作品。3本のパイプは海の中まで伸びていて、波の動きによって音が出る仕組みになっている。聞こえてくる和音は少し不気味で、でもそのリズムは不思議と心地よくしばらく聞いていたくなる。海にもし声があったら、人間に何を問いかけてくるだろう。1分が60秒で、1日が24時間で、7日が1週間というリズムで当たり前のように生きているけれど、波が刻むリズムや潮の周期のほうが、もしかしたら体内時計に合っているのかもしれない。