豊島③
塩田千春「遠い記憶」豊島で絶対観たかった作品の一つ。すごくよかった!今回こえび隊に参加して、受付をしながら一日中作品を眺めてた。大好きな塩田さんの作品の前でお昼寝もした!贅沢だ!かつて甲生(こう)地区の集会所だった建物を、使われなくなった扉や窓で埋め尽くした作品。外のジャングルジムやすべり台、鉄棒もそのままになっている。「昔は隣に小学校があったんだ。集会所の壁は、きれいなピンク色だった。」と自治会長さんが教えてくれた。錆付いてしまった遊具も、子供が遊んでいた頃は鮮やかな空色だったのだろう。 作品に使われている建具は、豊島のほか、直島などから集めてきたそうだ。黒ずんだ扉の向こうには、その家に住んでいた人たちの姿が浮かぶようだった。この扉で出来たトンネルの先には田んぼがあり、反対側には海があって、風がすり抜けていく。 甲生には今年、17年ぶりに赤ちゃんが生れたそうだ。私が子供だった頃は、校庭といくつか遊具があれば一日中そこで遊んでいた。それで日が落ちる頃になると走っておうちへ帰る。帰り道はうっかりしているととても寂しくなってくるのだ。家の窓には灯りが付いていて、その向こうでお母さんが夕飯を作っている、おばあちゃんがお相撲を見ている。遠くでお寺の鐘がきこえる。時間によって影の落ち方が変化していくのもこの作品の素敵なところ。夕方、長くなった影を眺めていたら、置いてけぼりになっていたあの頃の記憶が蘇ってきた。