ゴールデンウイークはBBQをしたり、山に登ったり、夏野菜の植え付けをしたり、キウイの剪定をしたり、アウトドアな活動ばかりになってしまった。連休の最後に楽しみにしているのが、チャールズ・チャップリンの代表作である映画『モダン・タイムス』(1936年)のライブ・オーケストラ上映だ。
チャールズ・チャップリン(1889-1977)と聞けば「歴史上の人物」と思っていたのだが、80年前の映画『モダン・タイムス』を見返してみると現代のビジネスマンの姿に重なるところが多かった。出勤ラッシュのシーン、ランチタイムのベルが鳴ると一斉に昼食を食べ始めるシーン、思い描く夢はマイホーム。去年あたりからアルバム再現ライブや名画の生演奏上映があちこちで行われているが、過去のものと決めつけていた作品も、生の音楽で再現すれば2016年の今でも新鮮な感動を与えられる。それはチャップリンの『モダン・タイムス』でも例外ではなさそうだ。
チャップリンとミッキー・マウスはどこか似ていると思っていた。
山高帽に、ちょび髭、ステッキ、どた靴のスタイル。次々にハプニングが降りかかる物語のせわしなさと滑稽さ。
チャップリンのデビュー作『成功争ひ』と、チャップリンがチャップリンたる格好になった第2作『ヴェニスの子供自動車競争』の公開は1914年。チャップリンのヒット作『黄金狂時代』は1925年公開。
一方、ミッキー・マウスが初めて登場した『蒸気船ウィリー』の公開は1928年だ。
先月、生オケ・シネマ上映に先駆けたトークイベントが行われた。その時の登壇者であったサウンド&ヴィジュアルライターの前島秀国さんにチャップリンとミッキー・マウスの関連性について尋ねたところ、こんなお話をしてくださった。
当時のチャップリンとディズニーは比較的良好な関係を築いていたし、チャップリンの時代の映画業界は現代のそれと比べとても狭い世界だったので、互いに影響し合うことが多々あった。『モダン・タイムス』で音楽指揮を担当しているのはアルフレッド・ニューマンで、ニューマン・ファミリーはディズニー映画の音楽を多数手がけている。
作曲家としての顔を持つチャップリンは、人物の動きに合わせた音楽を付けたが、そのことを映画用語では「ミッキーマウシング」と呼ぶ。
制作において完璧主義者だったというチャップリン。彼の作った音楽を、映像に合わせて生演奏するなんて至難の技だ。チャップリンの生オケでタクトを振れる指揮者は世界にたった4人しかいないそうだが、今回の生オケ・シネマ『モダン・タイムス』ではその一人でチャップリンの研究家でもあるカール・デイヴィスが指揮をする。
80年前の人々が映画館でゲラゲラ笑いながら観た『モダン・タイムス』を、2016年の自分に重ねながら大スクリーンで(しかも当時より高画質、当然ながら高音質)観られるのがとても楽しみだ。
【詳細】
新日本フィルの生オケ・シネマ〜公開80周年記念〜
チャップリン《モダン・タイムス》
日時:5月7日(土)昼公演14:00 / 夜公演18:00
場所:すみだトリフォニーホール
http://plankton.co.jp/moderntimes/index.html
『モダン・タイムス』の生オケ・シネマ上映にあたり、恐れ多くも推薦文を書かせていただきました。
http://plankton.co.jp/moderntimes/suisen.html