Turkish Pottery, 2016

Turkish Pottery, 2016

2016/01/25

青山文平『つまをめとらば』






















第154回直木賞受賞作、読みました。
青山文平『つまをめとらば』文藝春秋

短編が6つ収録された時代小説で、丁寧にとった出汁を使った和食を6品いただいたような読後感。派手さはないけれど、現代にも置き換えられそうな、何気ない日常の中のドラマチックさがキラリと光る作品です。
古風な言葉遣い、ユーモア、武士の礼節が、隠し味的に効いています。

小説の舞台は、18世紀後半〜19世紀前半の江戸時代。作者は武士と女性を通して「男のおぼつかなさ、それに対する女の圧倒的な強さ」を描いたと語っていますが、私は武家社会に生きる男性たちに、筋の通った気持ちの良さを感じました。
一方で女性の危うさや、したたかな面も描かれていて、「乳付」で見え隠れする女の嫉妬と不安定さは印象に残りました。この点は男性と女性とで捉え方が違うかもしれないですね。
じんわりと沁みてくる淑やかな作品でした。