いつも東京の夜の片隅で開催されている読書会「赤メガネの会」。
このたび合宿が開催されました。
泊りがけで、とことん本を読み、とことん本について語る行事です。
今回の合宿地は、多くの文豪が愛した湯河原。
湯河原にちなんだ小説ということで、課題図書は夏目漱石『明暗』(新潮文庫)が選ばれました。病によって未完となった漱石最後の作品です。
旅先との期待して読み始めたものの、湯河原が出てくるまでが長い。その上、大どんでん返しが起こりそうな予感を残して終わってしまうので「タイトルの明暗は何を意味しているのか?」「再会した2人の結末は?」「一番共感を覚えたのは誰?」と話が盛り上がりました。
夏目漱石は『門』以来2回目の課題図書。
展開を急ぐ読者をよそに、短いセリフ1つに至るまでの心情描写は恐ろしいほど徹底的。嫁と義妹の「ああ言えばこう言う」が繰り返されるシーンは、主人公の津田より前に私が逃げ出したい気持ちになりましたが、それでも最後まで読まされてしまうのだからすごい。
個人的には、湯河原でこのあとひと悶着あると思っているので、漱石が取り掛かっていたのはかなりの大作だったのではと予想します。この続編を何人かの作家が書いているので、それも読まなくては。
非常に重厚で、手に取るたびに試されているような気がする。今回もなんとか読み切りましたが、漱石を充分味わえる読書力を身につけたい。
タイムテーブルには、同じ空間にいながら各々読書にはげむ「読書タイム」があります。いつもの読書会にはない合宿ならではの時間。沈黙に響くページをめくる音、本を読んでいるメンバーの横顔が見られるのがとても好きです。
宿を出たあとは、湯河原にちなんだ俳句が楽しめる文学スポットを散策し、読書の秋を満喫して帰ってきました。
今は、松山で読み切れなかった『坊っちゃん』に取り組んでいるところです。