冗談やあらへん、駅前でラムネ1本に五円札出して、つり銭取れへんかったいう噂、
今日中にこの狭い街に知れ渡りまっしゃろ、
大きなつり銭取ったやないか
―山崎豊子『花のれん』新潮文庫
今年初めての赤メガネの会が開催されました。
最近このブログを知った方のために。「赤メガネの会」は、本好きな大人が3週間に1度集まって開いている読書会で、毎回1冊の課題図書と、各々読んだ自由図書を持ち寄って、喋りたいことを好きなように喋っています。たまに合宿もあります。今回で62回目でした。
今回の課題図書は、去年亡くなった山崎豊子さんの直木賞受賞作。
大阪の女興行師の人生を描いたど根性物語で、吉本興業の女主人がモデルになっていると言われています。商売とはかくあるべし、と頷かずにはいられない主人公多加の儲けっぷり。こってこての大阪弁に不思議といやらしさはなく、むしろお師匠さんやお得意様に対する彼女の人情に心を打たれました。
なぜ、五銭のラムネを五円で買うことが大儲けにつながるのか。
商売繁盛を祈願した方、バリバリ働く女性におすすめしたい1冊です。
ビジネス書とはまた違った角度から、魂を注入されますよ。
長編が多く、今まで敬遠していた山崎作品。まずは短いものから・・・なんて理由で手に取ったのだけれど、圧巻でした。ひとりの人間にスポットライトを当てながらも、それを取り巻く世の中の色々を拾い上げ、鮮やかに描き出す。初期の作品がこんな素晴らしくて、以降のシリーズものはいったいどれほど面白いのかと、すっかり読む気になっています。